原子核は陽子と中性子からなる量子多体系で、核力と呼ばれる粒子間の力で束縛されています。核力は極めて複雑で豊かな内容を持ち、その性質はいまだ完全に明らかにはなっていません。例えば強いテンソル力と呼ばれる成分を含んでいて、これは他の物理系ではほとんど議論されていません。テンソル力の場合は、中性子数を十分に変えると原子核の殻構造を変え、魔法数までも変えてしまうことが最近わかってきました。このように、エキゾチック核では安定核で確立された描像やモデルが変わってしまう、パラダイムシフトが様々な局面で起こりつつあります。また、2粒子間にはたらく2体力に加えて、3粒子同時に存在することによって現れる3体力の効果がかなり大きい、という最近の知見は、多面的なパラダイムシフトの一例です。このような状況下では、旧来型モデルの信頼性がゆらいでおり、それ故に新しい物理が活躍できるフロンティアです。フロンティアで頼りになるのは原理的なものに他ならないので、この場合には、核力にしっかりと依拠した多体理論計算がそれに相当します。
CNS理論グループでは、有効相互作用理論によって核力に基づいた量子多体問題を設定し、「京」などを用いた大規模量子多体計算を遂行します。これによって、核力の性質を議論しつつ原子核の構造を明らかにし、宇宙核物理における元素合成過程の解明などの応用へとつなげます。



CNS理論グループは現在、ポスト「京」重点課題(9)「宇宙の基本法則と進化の解明」サブ課題B「物質創成史の解明と物質変換」に参加し、2020年運用開始予定のポスト「京」に向けた研究開発を行っています。また、2016年3月に完了したHPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」課題2「大規模量子多体計算による核物性解明とその応用」に参加し、「京」を用いた研究を行ってきました。